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2018.05.01

瞑想ならぬ迷走のすすめ mind-wonderingがもたらす効果

ぼーっと注意散漫な状態「mind-wondering」

あなたが最後にぼーっとしたのはいつでしょうか?その時間はどれくらいでしたか?3年前と比べてぼーっとする頻度や時間は増えていますか?減っていますか?
 
近年、心理学や脳科学の分野においてこのぼーっとした注意散漫な状態を示す「mind-wondering」についての研究が進んでいます。
 
このmind-wondering、従来の研究では気分の落ち込みや不幸せな感情との結びつきが指摘されており、ポジティブ心理学においても過去や未来に頭を巡らせて思い悩むことに時間を費やすのではなく、「今・ここ」に焦点をあてる瞑想や、置かれる状況に感謝するエクササイズが推奨されてきました。これを読んでいるあなたも「隙間時間の有効利用に余念がない」という大勢の中の一人かもしれません。

mind-wonderingがもたらす効果

ところが、最近の研究において、mind-wonderingがもたらす以下のような効果が明らかになっています:

・創造力を高める
・読解力を高める
・流動的知性(柔軟な思考力)を高める
・問題解決力を高める
・仕事の効率が高まる
・より明確な目標設定ができる
・報酬を先延ばしにし、目標に粘り強く取り組むことができる

良いタイミングで心を自由に開放すること

これらの研究についてまとめている心理学者Jill Suttieも述べていますが、mind-wonderingが集中してタスクをこなしている状態や、ポジティブ心理学で幸福感の要素として挙げられるフロー状態よりも良いと言うわけでは決してありません。良いタイミングで意識的に心を自由に開放することで感情や思考のリセットを可能になり、物事を新たな意識でとらえるようになることを伝えたいのです。
 
と、ここまで読み進め「あ、なんだ、結局頭を休めることが大事なんだ」と感じた人も多いでしょう。しかし、近年脳科学の分野では「何もしていない時こそ脳が活発化している」という研究結果があります。それによると人間の脳が一日に使用するエネルギーのうち半分以上は、何もしていない時に使用されており、そこには、ぼんやりしている時に働く脳の神経ネットワーク「ディフォルト・モード・ネットワーク」が存在するのだそうです。
 
このネットワークの存在理由については諸説ありますが、自己認識や省察等、日々の活動に欠かせない思考と関連しているそうです。この「ディフォルト・モード・ネットワーク」の機能低下と認知障害の関連性が指摘されていることを考えると、もっと私達はぼんやり思いを巡らせることに寛容になっても良いのかもしれません。
 
 
——–
参照:
Jill Suttei, How Mind-Wondering May Be Good For You, Greater Good Magazine(カリフォルニア大学バークレー校Greater Good Science Center発行), 2018年2月14日掲載 https://greatergood.berkeley.edu/article/item/how_mind_wandering_may_be_good_for_you

Marcus E. Raichle他, A default mode of brain function, PNAS January 16, 2001. 98 (2) 676-682; https://doi.org/10.1073/pnas.98.2.676

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