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2023.08.15

知見を取り入れ、広げた1年。ウェルビーイングを体現する“本物の組織”を目指して

アステリア株式会社は1998年に創業した、「つなぐ」ソフトウェアの開発・販売事業を中心とし、デザイン戦略コンサル事業、企業投資事業なども行う会社です。
 
同社は創業当初より働きやすい環境・制度作りに力を入れてきましたが、2022年7月にYeeY共同創業者/代表取締役の島田をCWO(Chief Well-being Officer)としてお招きいただき、ウェルビーイングに関する取り組みにより力を入れてきました。島田をCWOに指名いただいた背景と、参画後の変化について、代表取締役社長/CEOの平野洋一郎さんに伺いました。
 
(インタビュアー:YeeY 取締役CBO・高橋ゆき)
 
 

 

平野 洋一郎
熊本県生まれ。熊本大学工学部の学生時代にソフトウェア開発ベンチャー設立に参画。1987年〜1998年、ロータス株式会社(現:日本IBM)でのマーケティング関係の要職を 歴任。 1998年インフォテリア(現:アステリア)株式会社創業。2007年東証マザーズに上場。2018年東証1部上場。2008年〜2011年本業の傍ら青山学院大学大学院にて客員教授として教壇に立つ。 公職として、ブロックチェーン推進協会代表理事、先端IT活用推進コンソーシアム副会長、日本データマネジメント協会理事、MIJS理事、熊本経済同友会常任理事、京都大学経営管理大学院特命教授など。

「知見を取り入れ、広げる」ための仲間として島田を選んだ

― 平野社長と、わたし、高橋ゆきの出会いは20年ほど前にさかのぼります。よりよい組織を作って行こうと言い合う、経営者仲間、遊び仲間でした。そして、良い社会を作るために一緒に活動しているわたしの大親友の島田由香が巡り合い、アステリア株式会社という大変社会的価値のある企業のCWOを務めることになりました。まずは平野さんと島田の出会いについて教えてください。

 
 
平野:初めて島田さんを知ったのは、高橋さんと、YeeY共同代表である島田さん、矢澤さんが一緒にやっていた音声配信SNSのコンテンツでした。高橋さんと同じような楽しい人がいるんだなとよく聞いてみると、どうも島田さんはユニリーバの人で、WAA(Work from Anywhere and Anytime)制度をスタートさせた人なんだとわかってきました。それで、この人は仲間だ!と感じたんですよね。
 
 

― 「仲間だ!」と閃いた?

 
 
平野:そうです。ウェルビーイングや働き方改革は、実は世の中の抵抗が強い側面もあります。弊社はコロナ禍にフルテレワーク、テレワークにするための手当の支給、スーパーフレックスの導入など新しい対策をどんどん行っていたのですが「やっていないところが悪く見えるから、あまりやらないでほしい」と周囲の経営者から言われることもありました。
 
そんなタイミングで、音声SNSを通して島田さんのこれまでの取り組みを聞きました。ワーケーションを含めて似たような施策をやってきているし、すごく楽しそうにウェルビーイングを推進しているから、直感的に「仲間だ」と感じたんですよね。
 
 

株式会社アステリア・平野 洋一郎 様
 
 

― 島田の、平野さんへの第一印象は?

 
 
島田:わたしが平野さんを知ったのも、同じく音声SNSでした。わたしが聞いたのは平野さんが経営者を招いて「経営 × 〇〇」というテーマで話す番組で、そのときの印象は「社長っぽくない」。すごく陽気な人だという印象でした。
 
そのあと平野さんからその番組にお招きいただいて話をする中で、「経営において大切にしたい部分」が共通していると感じました。働き方改革やワーケーションについて「本当に会社にとって良いものなの?」と疑問を持つ方もまだまだ多くいらっしゃいます。一方、平野さんは、それらの取り組みの大切さ、真髄のところを身体でわかっている人なんだと感じました。
 
 

― 音声SNSをきっかけに知り合い、2022年7月には島田がアステリアのCWOに就任しました。ご指名いただいたきっかけを教えてください。

 
 
平野:先ほどお話した通り、ウェルビーイングの推進に、一部から抵抗があるように感じていましたが、実は私は抵抗があると燃えるタイプ。理解が進んでいないからこそ、よりしっかりと取り組みたいと考えるようになりました。
 
そんな中で島田さんをCWOに、と考えた理由はふたつです。
 
まずは、島田さんのこれまでの英知や経験を取り入れて、より良いものにしていきたかったこと。アステリアでは、創業した25年前からテレワーク、オフィスの再定義、それらの取り組みによる生産性の向上など、働きやすい環境づくりに力を入れてきました。しかし、我流で進めるのには難しさも感じていました。だから、これまでいろんな場で経験を積まれて来た島田さんに力を借りられればと。
 
もうひとつは、島田さんが持っている縁や繋がりから、日本全体に「楽しい働き方」を広げられると考えたからです。「取り入れる」「広げる」の両方を実現するために、CWOには島田さんがもっとも適していると感じたんですよね。
 
島田:アステリアには、創業時から大切にしている軸がいくつもありますよね。その中で印象的だったものがふたつあります。ひとつは「いい状態で働くことが、結果として生産性を高める」という考え方を25年もの長きに渡って持ち続けていること。もうひとつは、開発に対しての考え方。世の中の人の声に左右されすぎずに、最先端の現場にいる人が大切だと信じるものを生み出し続けている点を、素晴らしいと思いました。
 
そんな素敵な取り組みをされているアステリアさんでウェルビーイングを推進できるなんてそんな嬉しいお声掛けはないと思い、CWOを拝命しました。

ウェルビーイングを体現し続ける本物の組織になり始めた

― 取り組みがスタートしてから1年が経過しました。1年の間の取り組み、印象的だった出来事を教えてください。

 
 
島田:まず感じたのは、CWOの役割を“社外CxO”として行う重要性です。”社外CxO”は平野さんの造語ですが、社員でもない、部外者でもない、今まで他の場所で担ってきた立場や動き方を生かして、客観的かつ主体的にアステリアのウェルビーイングを考えられる、すごくいい温度感だと感じています。もちろん「もっと入り込みたい!」「1on1をして一人ひとりと対話したい!」と思うこともあるのですが、あえてそうじゃない形で接すると見えるものもあるんですよね。
 
 

YeeY共同創業者/代表取締役・島田 由香
 
 
平野:参画当初から島田さんには「内部のために人事、外部のために広報に力をいれてほしい」とお願いしていました。
 
島田:人事や広報の方と毎日話をできるわけではありません。それでもワンチームだと思ってもらえるようにチームを作り、チームで一緒に進めていく意識の醸成を行ってきました。
 
平野:人事などの管理部門は、内を向いて黙々と業務を進めるシーンも多くあります。一方で広報は外を向いてアクティブに仕事を進めます。私が島田さんにお願いした、内部向けと外部向けの2つのミッションを2つのチームが連携していくきっかけになったと感じています。外からは見えにくいですが、とても大事な変化です。
 
さらに、島田さんは「島田さんがいるから変わる」ではなく「島田さんがいなくても自走できる組織にする」ということを意識的に進めているので、自走してウェルビーイングを体現し続ける組織に変わりつつあるように感じています。
 
 

― 具体的な活動や成果はありますか?

 
 
島田:2023年の7月5日に、アステリアから「ウェルビーイング活動と企業業績に関する実態調査」をリリースしました。この施策は、わたしが参画した2022年7月から「世の中の会社が『よし、ウェルビーイングに力を入れよう』と思えるような何かをしたい」と話をもらっていたものです。
 
わたしはその内容や、そこに込められたアステリアのみんなの思いを理解するところから参加させてもらったのですが、どんな思いがあって、どうして行きたいのか、という話が本当にたくさん出てきたんです。
 
そんなに強い思いがあるのなら早く実現しようと、調査会社とともにデザインし、サンプル数500を超える信頼性のあるデータが取れました。ウェルビーイングと幸福について研究する矢野和男さんからもお墨付きをいただいています。
 
平野:それから、2023年の7月にはアステリアの軽井沢オフィスがオープンしました。アステリアがこれまで推進してきた「オフィスの多様化」「五次元化」を実現するための施策のひとつで、アステリアとしては初の「リゾートオフィス」です。島田さんには、軽井沢オフィスを使って4日間のウェルビーイングキャンプを開催してもらいました。
 
 

軽井沢オフィス
 
 
島田:コロナ禍が収束し、いかにオフィスに社員を戻すかを考える会社もある中で、オフィスを分散し続け、ついにリゾート地にまで拡大するなんて素晴らしいですよね。
 
今回企画したのは名付けて「軽井沢ワーケーション&ウェルビーイングキャンプ」。4日間で毎日入れ替わりの6つのチームが軽井沢に来て、朝から夜まで12時間、アクティビティを取り入れながらチームで過ごす取り組みです。
 
さまざまなワークを経てチームの絆が強くなったように思いますし、新しい視点を取り入れ、組み合わせながら協力する雰囲気も醸成できました。リゾートオフィスでのバーベキューではいつもとは違う形のコラボレーションができ、楽しい活動でしたね。
 
 

大自然の中で行う、トイフープを使ったチームビルディング
 
 

食事もチームで協力して作る
 
 
島田:参加したメンバーにもさまざまな感情が沸き起こったようで、感想をいただいているので、平野さんにもこの機会に改めて共有させてください。
 
まずは、参加者の Sさん。
 
“参加前は何をするのかまったくわからず不安でした。しかし、実際に軽井沢に到着し、浅間山が目の前にそびえる雄大な景色や広がる大自然に囲まれた環境で、心からの開放感を味わい、心身ともにリフレッシュすることができました。
 
さらに、チームで困難な課題にコミュニケーションを取りながら考えを共有し、協力して乗り越えることで得られる爽快感は格別で、チーム全体で目標を達成した瞬間の喜びや達成感は久しぶりに感じることができました。今回の経験を通じてチームの一体感やコミュニケーションの重要性を再認識し、ともに成長していくための貴重な機会となりました”
 
平野:チームでの活動が、Sさん自身の成長の機会になったようですね。
 
島田:もうひと方、Iさんからはこんな感想をもらっています。
 
“テレワークが中心で社員とのリアルな交流が極端に少ない昨今において、軽井沢という自然豊富な特別な地にて自部署の社員、さらには普段接することの少ない別部署の社員との交流は刺激的なものでした。2人でのフィールドワーク作業で失敗してしまったのに、その後さらに困難度を増す4人での作業が成功できたという貴重な経験を体験できたことは自分にとっては大きな驚きでした。先入観でがんじがらめになっていた自分を反省することができるいい機会でもありました。
 
アステリアは今後も他社に先駆けて、デジタルとリアルとの融合による高次元でのコミュニケーションが創り出す新たな働き方を追及してくのだろうと感じました”
 
平野:嬉しい感想ですね。3年以上も、コロナ禍によって身体を使った活動が制限されてきました。2年目は、島田さんと一緒にリゾートオフィスの活用も含め外でのアクティビティをどんどん取り入れて、五感を使う・五感を伸ばすウェルビーイングに力を入れていきたいと考えています。
 

自由で多様なウェルビーイングを、アステリアから

― 最後に、アステリアという“生命体”が、今後何を目指していくのかを教えてください。ウェルビーイングについての取り組みには終わりもゴールもないと思いますが、まずは「島田とここまでいきたい」と言った目標があれば。

 
 

YeeY 取締役CBO・高橋 ゆき
 
 
平野:高橋さんの言うように、弊社ではゴール設定はしておらず、“どこまでも”行きたいですね。僕は“ゴールを設定せずにどこまでも追求する”意識こそ大切だと思います。とにかく楽しく仕事をする。そうして、日本の創造性と生産性をもっと上げるのが私のやりたいことです。
 
 

― 大賛成!

 
 
平野:ウェルビーイングを推進するために、達成すべき数値目標が課せられていたり、活動のすべてにレポートの提出が必要だったりするのは、矛盾しているようにも思います。それぞれの企業にやりたいことがあり、そこに向かって進んでいれば、社員も楽しく仕事ができるはず。ウェルビーイングはもっと自由で多様だと思っています。
 
日本では、しかめっ面をして黙々と仕事をするのが美徳のようにも言われてきましたよね。企業によっては、私語も禁止。そんな風に仕事をしてきたから「失われた30年」が生まれてしまったようにも思います。私の楽しい仕事の原点は、アメリカが本社の外資系での仕事。当時勤めていた会社の行動指針の最後に“Have fun.”があり、アステリアの創業当初から、それを目指してやってきました。
 
弊社の経営理念のひとつに「幸せの連鎖」があります。2007年に制定したときには「宗教みたい」と揶揄されたりもしましたが、最近はかなり受け入れられてきている。だから、会社の方針や理念に「楽しい」「幸せ」そんなキーワードが入る世の中を作っていけたらいいなと思います。
 
島田:平野さんとは、日本のウェルビーイングの底上げをするための最善と最高を、ともにやっていきたいです。最近は、アステリアの社員のみんなと「なにをしたら社員のウェルビーイングが上がると思う?」と議論しています。さらに踏み込んで、ウェルビーイングのプラットフォームエンジンとして、どうすれば外にウェルビーイングを広げていけるかも考えていきたいですね。
 
 

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