絶え間ないタスクと時間のレース
絶え間なくやってくるタスク。限られた時間。気が付けば季節が変わり、本当にやるべきこと(大事な人と時間を過ごす、長期的な目標達成への準備など)に全く時間を割くことができなかったと、落胆することを繰り返している人も少なくないのではないでしょう。
また、時間不足は、慢性的ストレスや睡眠障害などを引き起こすことが指摘されており、人手不足が叫ばれる日本社会において、今後益々深刻な問題になりそうです。
では私達は「時間が無い」という問題にどのように対処すれば良いのでしょう。ここであなたに2つの選択肢を提示します。今のあなたはどちらを選びますか?
①時間管理術を学んで限られた時間の中でもっとタスクをこなせるようになりたい。
②限られた時間をもっと自分にとって意義深いものにしたい。
②を選択した人にスタンフォード大学とミネソタ大学の研究者たちが明らかにした、時間を「費やす」のではなく、より深く「味わう」方法をご紹介します。
時間は”費やす”から”味わう”へ
時間をより深く「味わう」方法、それは畏敬の念を抱くことです。
「畏敬」とは「崇高なものや偉大な人をおそれうやまうこと」。畏敬の念を抱くことで、ストレスが軽減され、より寛容になり、時間のゆとりを感じることが明らかになっています。更に他者への貢献意欲(利他性)も高まることが報告されています。
では、畏敬の念はどこでどのようにして抱くことができるのでしょうか。
一番効果があるのは「自然」
一番効果があるのは「自然」です。長い年月を経て姿を変えてきた木々。限られた時間の中で輝きを放つ花。宇宙の広がりを伝える遠くに瞬く星。それらに目を向ける時、私達は人の力を超えた偉大なものの一部であることに改めて気づかされます。
それら自然を感じ、意識を「今・ここ」に向け、焦りや迷いから離れて肯定的な感情を味わう方法に写真があります。写真を撮るという行為は、立ち止まり、観察し、一点に意識を集中させ、そこから何かを受け取ることを可能にします。
「今・この瞬間」とのコミュニケーションなのです。
近年マインドフルネスが話題になっており、瞑想を推奨する情報もたくさんあります。「瞑想は難しそう」「やり方がわからない」という人も、写真を撮ることならできるのではないでしょうか。実際ある米国の大学では、マインドフル実践の手法として写真のワークショップを開発しています。
最後に、先程の質問で①を選択した人にとって、今回ご紹介した手法は役立つように思えないかもしれません。しかし心を休め、自分にとって大事なものを見出す時間を持つことにつながれば、目の前にあるたくさんのタスクの優先順位をつける助けにはなるでしょう。そして、そのことはタスクと時間の終わらないレースから一抜けし、何にも振り回されず、自分の人生の手綱をしっかり握って生きていくきっかけになるはずです。
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参照:
Emily Campbell, How Photography Can help Cultivate Mindfulness and Gratitude,
Greater Good Magazine(カリフォルニア大学バークレー校Greater Good Science Center発行), 2018年2月13日掲載
https://greatergood.berkeley.edu/article/item/how_photography_can_help_cultivate_mindfulness_and_gratitude
Diane Dreher, Too Much to Do in Too Little Time?, Psychology Today, 2018年3月17日掲載
https://www.psychologytoday.com/us/printmail/1113070?destination=node/1113070&destination=node/1113070